クルマ自分流 Part.1 カスタム&ドレスアップカー オーナー訪問記

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世代が変わっても見間違えようのない911ならではのスタイリング。ただしディティール処理は時代とともに洗練され、決して古くはならない巧妙なデザインだ。

ポルシェ911(type997 2004年~2011年)

  • 全長×全幅×全高=4425㎜×1810㎜×1310㎜
  • エンジン=水冷フラット6 DOHC
  • 排気量=3,824㏄
  • 最高出力=325㎰
  • 最大トルク=37.7㎏-m
  • レイアウト・駆動方式=リヤエンジンリヤドライブ
  • ミッション=6MT、5AT(後期型は7DCT)

1964年に初代がデビューし世界中に信者がいるポルシェ911。空冷エンジンをリヤに積み後輪を駆動する、いわゆるRRが永らく特徴だった。大きな転換は、前モデル996の時代に水冷エンジンに変わったこと。これにより時代に合わせた環境性能とパワーを両立できた。ボディも拡大を続けた結果、911原理主義者と呼ばれるファンには930以前の‟ナローボディ”こそが真の911であるとの評価が根強い。997型は、996型で不評だった涙目のようなヘッドライトが、丸くスッキリとしたデザインに戻ったことも好評だった。

久々の応募者のユーザーご登場ですが、クルマはなんと本企画に初登場となるポルシェ911です!ブラックの911から降りたのはオーナーの山崎さん。もう、根っからのポルシェ信者で、これまでに6台を乗り継いで来られたそうです。果たして山崎さんのポルシェライフはいかなるものか、お話を伺いました。

初めてポルシェに関心を持ったのは「小学校3年生のころ、76年式のマルティニポルシェのプラモデルを作って以来ですね。カッコイイ!と思って、それ以来ずっとポルシェ一筋で、いつかはポルシェと思ってきました」。しかしポルシェは昔から高価なので、「免許を取ったばかりの若いころは買えないので、40万円くらいで売っていた中古のスカイラインジャパンとか、これも中古でBMWとかメルセデスとか」に乗っていたそうです。

念願叶い初めてポルシェを買ったのは29歳の時、約20年を経過した78年型の911SCでした。「初ポルシェ、これは炎上して黒焦げになりました。燃えるかもとは聞いていたのでメンテナンスはきちんとやっていたのですが、一般道を普通に走っているときにフロントから煙が出て。その時はパワーウインドウが故障中だったので路肩に停めて、バックミラーを見るとリヤウイングのあたりには炎が見えて、すぐ真っ黒な煙がモクモク。ペットボトルの水くらいじゃ消えず、でもすぐに消防車が5台!も来て、警察も来て。クルマは全焼でした」と、大変な目に遭っていたのです。

普通はこれで関心が移ることが多いのです。山崎さんも「ポルシェはこんなもんか、もうやめようと。で次はベンツにでもしようと思い、ある日クルマを見に行ったのですが、その途中の高速道路で白い930ターボに遭遇してしまい、グアーっと追い越していくのを見てカッコイイ!やっぱりポルシェだ!と(笑)」全然懲りてはいませんでした。2台目は88年型の996カレラで、買ったのは2001年のこと。ところが「これもトラブル続き(笑)。走っているとギアが抜けちゃうんです。いろんなショップや専門店で見てもらったけど原因不明。ベテランのメカニックでも『わかんねー』って。しょうがなく根治できないまま乗り続けたものの、怖かったですよ。いきなりスポって抜けるから」と思いながらも3年ほど乗ったそうです。

そして3台目は「縁があって964型のカレラ4です。これはエアコンもヒーターもあって、そんなにトラブルも起こらず快適に乗れた」のですが、やはり930ターボへの思いが強く2年で買い替えることに。4台目はというと「次は86年型の930カレラに行きました。買ったのは2006年です、サーキット仕様で、内張はもちろんエアコン、ヒーターもないドンガラ状態。降りるときは内張のひもを引っ張ってドアを開けるようなクルマで、夏場は軽く50度を超えるし、冬は寒さに震えながら乗ってました(笑)。でも他にないから足に使ってましたが、これは930だから我慢できたんです、ずっと憧れだったから」。この時期、930に乗らないときは電車で移動。このクルマを売った後はしばらく適当な911が見つからず、その時代も電車だったという。

そして2012年に5台目となる930ターボルックのカレラを購入。「これはファクトリーもののターボルックで、結構気に入って7年間乗りました。自分の中ではこれが最後の911かと思ったくらい」お気に入りだったそうだが、2019年に処分し、少しのブランクの後に現在の997型カレラS(2005年型)を購入。「水冷エンジンに興味があって、次に買うなら997以降だと思っていた」のが動機。もちろん、ポルシェ乗りなら空冷から水冷への大転換は気になりますよね。

乗ってみて、「空冷時代はオイルを食うエンジンなので、常にペットボトルにオイルを入れてストックしてました。まあ自分でメンテナンスする楽しみがあって、手をかけるのは気にならなかったんですが、水冷はメンテナンスの楽しみはないですね。味気ないというか、自分でいじると保証の対象外になるとか。その分良くできてはいますけど。空冷は手もかかるし機嫌を取るのも大変なんだけど、快調に走ってくれる時の魅力が苦労を上回っちゃうんですよね(笑)」わかりますね、その気持ち。好きなものにのめり込むってそういうことじゃないかと思います。ところで、今の山崎さんの心配は昨今急騰している911の中古価格。「また930に戻りたいと思って調べたら、今市場にある最安値が550万円。78年型でボロボロ。このクルマを買ったらどんな目に合うか(笑)。普通の中古車っていう程度だとおそらく1000万円超かな」。特にナローポルシェはクラシックとして人気が出ちゃってますから、悩ましいですね。

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ダッシュボード上には少し目を引く赤いカバーがかかる。

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本来カレラSのボンネットにはルーバーはないが、これはGT3仕様と同様にした。

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19インチホイールに235、35扁平のタイヤ。赤いブレーキキャリパーが覗くが、ポルシェのブレーキは某評論家が宇宙一と評価したほど。